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みみうち「授業におけるサポート1(聴き取るために)」

2020年12月10日更新

 聞こえにくい人の授業を担当する先生方から、「どのように対応したらよいか分からず、戸惑っている」という声が聞かれます。サポートする際は、「聞こえ」に配慮すること、「視覚情報」を活用すること、「周囲の理解」を得ることが大切です。今回は聴覚に関する配慮についてお伝えします。

  1.音の存在に気をつける。2.聞き取りやすく話す。3.雑音を減らす。

 聞こえにくさは人によってさまざまですが、音の存在に気づかず、話しかけられていることに気づかないことがあります。はっきり聞き取れないことで、聞こえていても言葉の意味が分からず、指示されたことが分からなかったり、授業内容が理解できなかったりすることがあります。

 

音の存在に気づかせる

 授業中、話されていることに気づかないことや、説明を聞き逃してしまうことがあります。誰が話しているのか分からないと、話を聞き取ることが困難な場合があります。話をしている「話者」を知らせ、話者に集中して聞き取りやすい環境を整えることが大切です。話者となる先生方は聞こえにくい人が話者に注目していることを確認して、話し始めるようにしてください。ほかの子どもが発言するときも、発言者を知らせるなど確認させてください。作業中、夢中になっていて呼ばれたことに気づかない生徒の肩をたたいて知らせている様子を表しています。

 また、聞こえにくい人がほかのことに集中していたり、下を向いていたりすると、声をかけても気づかないことがあります。ほかの事に集中していると聴く準備ができず、聞いているようで聞こえていない状態になることもあります。目の前で手を振ったり肩をたたいて知らせてください。

 授業で作業や実験を行う場合は、時間やサインを決めたりして、話者に意識が向くようにしましょう。また、振動により気づきを促すことは有効です。軽く足を鳴らして知らせるなど、サインを決めておくのも方法の一つです。また、フラッシュライトなど光により注意を向けるのも効果的です。

 

聞き取りやすく話す

 小さな声は聞き取りづらいですが、大きすぎる音も聞きづらいものです。普段よりやや大きめの声ではっきりと話すよう心がけてください。

 広い部屋や体育館などは音が反響したりして聞き取りづらい場合があります。マイクや補聴援助システムを使用することによりも、聞きやすさが改善される場合があります。

 また、話しているとだんだん早口になりがちですが、意識してゆっくり話すことを心がけましょう。ときどき話を区切り、聞こえにくい人が聞きとれているか、目を配るのも良い方法です。聞き取りやすい話し方になるうえに、話の内容が理解できているか確認することができます。

 聞こえにくいと、話を聞きながらメモやノートを取ることが難しいので、話と話との間を空けてメモを取る時間を確保することは大切です。

 ただし、「りんご」を「り・ん・ご」というように区切ってしまうことは、やめましょう。言葉にはリズムやアクセントがあり、それは聞き取るときの大切な情報になります。不自然なリズムになると、かえって分かりにくくなります。自然なリズムで、ゆっくり目に話すようにしてください。

 教室内でのさまざまな音をイラストで表しています。

聞き取りやすい環境をつくる

 聞こえにくい人は小さな音が聞こえにくく、音がひずんで聞こえることがあります。少しでも正確に聞き取るために、できるだけ静かな環境で聞きとれるようにしましょう。

 教室の中にはさまざまな雑音があります。いすや机を動かす音や教科書やプリントなどをめくる音など、聞こえる人にとって気にならない音が大きく響く場合があります。補聴器や人工内耳の性能は向上していますが、雑音が思いのほか大きく聞こえ、話者の声が聞こえないことがあります。できるだけ雑音を減らし静かな環境をつくりましょう。

 大勢の人が集まっていると、あちらこちらで小声での雑談が始まります。小さな声でも雑談は雑音となり、聞こえにくい原因となります。同じ言語であると、人の話し声は同じくらいの高さ(周波数)の音がよく使われます。人は興味のある音を脳で選択的に聴き分けています。これを「カクテルパーティ効果」といいます。

 大勢の人が話している場面で行われる会話は、同じくらいの高さの音から、自分が必要とする声を選んで聴かなければなりません。聞こえにくい人の場合は、どの音が聞き取る必要のある音か、選択するのは困難です。

 たくさんの人がいる場で話者の声を聴き取るためには、集中して声を聞く必要があります。長時間、集中するのは大変疲れます。集中力が途切れると、話を聞き逃してしまうこともあります。両耳に聴覚障害がある人だけでなく、片耳に聴覚障害がある人や聴覚過敏のある人にも、音を聞き分けるのが難しい人がいます。授業中は、私語を減らすよう、周りの人に理解を促しましょう。

 グループ別で話し合うときなど、他のグループの人の声がすぐ近くで聞こえないよう、グループの間を離したり別室にしたり、工夫しましょう。

 1.音の存在に気づかせる。2.聞き取りやすく話す。3.雑音を減らす。

 話者が気をつけるとずいぶんと伝わりやすくなります。聞こえにくい人と話すときだけでなく、さまざまな場面で共通する会話を聞き取りやすくする、ちょっとした工夫です。意識すると効果に気づくと思います。

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