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みみうち「『聞こえにくさ』からくる子どもの行動」

2020年9月11日更新
vol.5  2020.9

 聞こえにくい子どもは、周りの様子を見て動くことができたり、黒板を見ておとなしく学習できていたりすることで、一見問題がなさそうに思えます。しかし、聞こえにくいことによって起こる、生活の中での不自由さを抱えています。「自分の聞こえにくさ」を他者と比べることは難しいため、本人が不便さや困ったことに気づいていない場合もあります。周囲が気をつけてその子どもを見てみると、その子どもが不便であったり困ったりしている場面に気づくことができます。

 ここでは、日常生活の中で見られる聞こえにくい子どもたちの行動と、その行動に対するサポートを3つあげています。

  

1.周囲をキョロキョロ。動作が遅れる。

 集団での活動の中で、よく周りを見回していたり、指示の後の行動が遅れ、後方のグループにいたりしがちな子どもはいませんか?

 キョロキョロしているのは、何をすべきか分からないため、周囲の様子を見てどのような行動すればよいか確認しているためです。また、全員に対して指示が出ても、聞きとれなかったり聞こえなかったりするため、すぐには動けません。他の子どもたちの様子を見て行動を開始するので、遅れて行動したり、後ろのグループにいたりする場合があります。

 指示を的確に伝えるためには、板書するなど視覚的情報を与えて確認できるようにしましょう。また、毎回行うような約束事はあらかじめ書いて貼っておくとよいでしょう。この支援によって、聞こえにくい子どもだけでなく全員の約束事としてスムーズに取り掛かれるようになります。

  周囲の様子を見ても、何をすべきか分からないこともあります。具体的に何をすべきか伝え、理解できたかを確認し、実施できるようにサポートしてください。

 

2.話がチンプンカンプン?話の理解が遅い。

 その場の話と異なる発言をしたり、一方的に話したりする子どもや、質問に対して的外れな発言をしたり、質問に答えるまでに時間がかかったりする子どもはいませんか?

 聞こえにくい子どもは、聞き取ることに一所懸命になり、聞きながら内容を理解し、考えることが難しいことがあります。

 聞き取りがうまくできないと、その場の話がすぐに理解できなかったり、問いかけが分からなくなったりします。聞き取れたいくつかの言葉をもとに推測したり、聞きとれた内容をもとに考えている間に会話が進んでしまうこともあります。そのため、的外れな答えになってしまったり、発言がずれることがあります。また、知らない言葉があると、それが何を示すのか考えるため時間がかかる場合があります。

 質問の意図が分かりづらいと、適した答えができません。「誰が」「いつ」「どこで」など、答えて欲しい部分を区切ったり強調したりして話してください。一文一文が長いと、意味を把握することが難しくなります。できるだけ短い文で話してください。一つ一つの文が理解できているか確認しながら話すと、どこまで理解しているか分かり、補足説明もしやすくなります。

 

3.みんなの中で黙ってニコニコ。話に入れない。 

 友達同士でおしゃべりをしているときや話し合い活動などで、発言せずニコニコ笑って座っている子どもはいませんか?

 大勢の中での聞き分けは特に難しいものです。たくさんの人の話し声は、聞き取りをする上で、大きな障害となります。話し合い活動などで誰が発言しているかが分からない場合は、発言者に意識を向けることができず、内容を聞き取ることがとても難しいです。特に、一斉に話されると、誰の発言に注目すればよいか分からなくなります。

 一人の発言した内容について考えているうちに話が進み、話についていけなくなることもあります。話の内容を見失ったり、何を求められているか分からなかったりすると、発言することができません。学年が上がるにつれ、困ったことや分からないことを周囲に悟られまいと分かったふりをしたりして、ニコニコと笑ってやり過ごしてしまう子どもが少なくありません。

 まず、発言者が誰か分かるため、起立することや手を挙げて注目を集めてから話し出すなど工夫をしましょう。学習の中で話し合い活動などのルールとして決めるとよいでしょう。また、話のテーマや発言が分かるように板書したりしましょう。ところどころで、発言をまとめる時間や、議事の進行を確認する時間があると、聴覚に障害がある子どもだけでなく全員の共通理解が図れ、より分かりやすくなります。

 注意を向ける人数が限られると、話が聞き取りやすくなります。しかし、周囲に別のグループが話をしていると、人の声が混ざるので聞き取り難くなります。少人数で、他のグループと距離を取って行うと、比較的聞き取りやすくなります。3人の生徒が会話しているところで、一人は人工内耳を装用しているイラストです。

 友達同士のおしゃべりでも同様のことがいえます。おしゃべりの輪の中で、発言せずニコニコと聞き役に回っているように見える子どもがいます。周りから話が通じなかったと気づかれないため、困った顔をせず、笑ってやり過ごしているためです。後から何の話だったか確認できればよいのですが、疎外感を感じたままになる場合が多いものです。

 周囲の子どもにも聞こえにくいことはどのようなことか、学ぶ場を設けてください。そうすることで、具体的に話している内容を確認したり、しなければならないことを教えたりするなど、サポートを行おうという気持ちが形作られてきます。互いへの理解が深まり、自然に助け合うことができるとよいですね。  

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